2026年の新米、安くなったけど喜んでいいの? 今年のお米の値段で知っておきたいこと

「今年の新米、去年よりかなり安くない?」

8月下旬からスーパーに並び始めた新米を手に取って、そう感じた方は多いのではないでしょうか。精米5キロで2,500円前後。去年は同じ棚に4,000円近い値札がついていたことを思うと、ほっとした気持ちになるのは当然です。

でも、ちょっとだけ立ち止まって考えてみてほしいのです。この「安さ」の裏側で、今、何が起きているのか。

去年と今年で、何がこんなに違うのか

2025年の夏。スーパーからお米が消え、SNSには空っぽの棚の写真が並びました。あの「米騒動」をきっかけに、お米の買い取り価格は一気に跳ね上がり、産地によっては玄米60キロで3万円を超える値がつきました。

ところが今年、状況は一変しました。

全国の産地で発表されている買い取り価格を見ると、たとえば新潟県産コシヒカリは、4割近く下がっています。北海道のゆめぴりかも、やはり前年の6割程度。四国や九州の早場米にいたっては、去年の半値を下回っている産地もあります。

消費者にとっては「値下がり」ですが、農家にとっては「暴落」と言ってもいい振れ幅です。

お米を作るのに、いくらかかるか知っていますか

ここでひとつ、あまり知られていない数字を紹介させてください。

肥料、農薬、種苗、農機具の償却、乾燥・出荷の費用――お米を作るために実際に出ていくお金だけで、玄米60キロあたり1万円台の前半になります。そこに農家さん自身の半年分の労働を加えると、2万円を超えます。

今年の買い取り価格は、多くの産地で1万4,000円台から1万8,000円台。農家さんの働いた分を差し引く前の「材料費」ですらギリギリか、それを下回る産地も出ています。

しかも、肥料や燃料の価格は下がっていません。むしろ上がり続けています。去年の高値を見て、ローンを組んで新しい農機具を買った農家さんもいます。値段は急に下がったのに、出ていくお金は変わらない。その苦しさは、想像に難くありません。

ひと昔前の日本の米作りは、家族経営の小規模農家が中心でした。田植えも稲刈りも家族総出。自分たちの人件費は帳簿に載らないから、少しでもプラスが出れば続けられた。極端に言えば、「赤字じゃなければいい」という感覚で成り立っていた部分があります。

けれど今は違います。大規模化が進み、農業法人として従業員を雇って経営している農家が増えました。給与、社会保険、機械のリース料。毎月決まった額が出ていく以上、「お米で利益を出す」ことが前提でなければ経営が回りません。買い取り価格が材料費すら割り込むような状況は、法人にとっては「我慢してやり過ごす」では済まない、事業の存続にかかわる問題なのです。

「安い」が続くと、何が起きるか

去年は高すぎた。今年は安すぎる。では来年はどうなるのか。

お米の値段がここまで乱高下すると、農家の判断にも影響が出ます。赤字が続けば、お米を作ること自体をやめる農家が増えます。実際に、高齢の農家を中心に「今年でやめようか」という声は、全国各地で上がっています。

作る人が減れば、供給が減る。供給が減れば、また値段が上がる。その繰り返しの中で、安定してお米が手に入る状態そのものが、少しずつ揺らいでいるのです。

田んぼには、お米を作るだけではない役割もあります。水路の管理、農道の草刈り、地域の景観の維持。一軒の農家がやめると、周囲の田んぼにも影響が広がっていく。お米の値段の問題は、実は私たちの暮らす地域の風景の問題でもあるのです。

「ちょうどいい値段」って、いくらなんだろう

消費者としては、お米は安いほうが助かる。5キロ2,500円ならありがたい。でも、農家がそれで生活できないなら、その価格は長くは続きません。

一方で、農家が安心して作り続けられる価格は、精米5キロで3,000円台の半ばあたりだと言われています。去年のように4,000円、5,000円となると消費者が離れてしまう。逆に今年のように2,500円を切るような水準だと、作る側が持たない。

結局、「消費者も農家も無理なく続けられる値段」は、その間のどこかにあるはずなのです。けれど、お米の価格には市場の力が強く働くため、なかなかその「ちょうどいいところ」に落ち着いてくれない。これが日本のお米が抱えている、根の深い問題です。

農家から直接買うという選択肢

「じゃあ、消費者にできることって何かあるの?」

そのひとつのが、農家さんから直接お米を買うこと。

スーパーに並ぶお米は、農家→JA→卸売→小売という流通を経ています。その途中でマージンが乗るため、農家の手取りは店頭価格よりずっと低くなります。農家直送であれば、消費者が払う金額がそのまま農家の収入になる。同じ金額を払っても、届く先が違うのです。

もちろん、すべてのお米を直接買う必要はありません。ただ、ふだん食べているお米の一部だけでも「この農家さんのお米にしよう」と選ぶことが、どこかの田んぼを来年も続ける力になる。それは、お米の価格が乱高下するこの時代に、消費者ができるいちばん具体的な「応援」のかたちかもしれません。

このサイト「農家のお米屋さん」では、全国の農家さんを都道府県別に探せるようにしています。それぞれの農家さんが、どんな場所で、どんな品種を作っているのか。顔の見えるお米選びの入り口として、ぜひ覗いてみてください。

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